
目次
お子さまが口元を打った直後に確かめる優先順位
お子さまが歯をぶつけたすぐあとは、まず頭を打ったようすや止まらない出血がないかを確かめます。なければ、欠けたかけらや抜けた歯を乾かさないようにして、歯科医院へ連絡してください。この記事では、救急と歯科のどちらへ向かうかの目安、出血・欠け・ぐらつき・抜けた歯のそれぞれで受診前にすべきことと避けたいこと、生え替わりの時期に気をつけること、電話で伝えることを順番にまとめています。
この記事の要点まとめ
- 頭を打ったようすや止まらない出血があれば救急の相談を先にし、お口のけがは歯科医院へ連絡する。
- 血はガーゼで押さえ、かけらや抜けた歯は乾かさないように取っておき、歯を動かしたり戻したりしない。
- 乳歯か永久歯か分からなくても家で戻さず、ぶつけた時間やようすを伝えて受診のしかたを確かめる。
子どもが歯をぶつけたら、歯科と救急のどちらを先に考えればよい?
お子さまが泣いている・怖がっていることと、受診を急ぐかどうかは分けて判断します。頭を打った様子や止まらない出血があれば救急相談を優先し、お口の中だけのけがであれば歯科医院へ連絡してください。子どもの歯の外傷は未就学児の約15%、学齢期の子どもの20〜25%が経験すると報告されており、早めの確認が求められる場面も少なくありません1。
子どもが怖がっているときも、まず受診の緊急性を確認する
当院では、お子さまが歯科医院に苦手意識を抱かないよう、コミュニケーションと楽しい雰囲気づくりを重視し、緊急時以外は無理に治療しない方針を心掛けています。ただし歯をぶつけた直後は、まずその「緊急時」に当たるかを確かめる段階であり、泣いているからといって受診を先延ばしにするという意味ではありません。怖がる気持ちは受診を控える理由にせず、お電話の際にお伝えいただく情報として整理していきましょう。
頭を打った、吐く、ぼんやりしている場合は救急相談を優先する
転んだはずみに頭もぶつけているときは、歯の手当てよりも体全体のようすを確かめるのが先です。意識がぼんやりしている、何度も吐く、頭をひどく痛がる、手足の動きがいつもと違うといったようすがあれば、歯科ではなく救急や小児科などの受診を先にしてください。迷うときは、子ども医療電話相談(#8000)などの窓口で、どうすればよいかを聞く方法もあります。
押さえても止まらない出血や、唇・あごの深い傷があるとき
清潔なガーゼやタオルでしばらく押さえても血が止まらない場合や、唇・あご・お口の外側に深い傷があるときは、医科や救急での処置が必要になる目安です。顔が大きく腫れている、噛み合わせが急に変わってお口が閉じにくいといった場合も、顎の骨などのけがが疑われます。また、血液をさらさらにする薬(抗凝固薬など)を服用しているお子さまは、出血を伴う処置で配慮が要るため、受診時に必ず医師へ伝えてください2。
出血・欠け・ぐらつき・抜けた歯、受診前に何をして何を避けるべき?

出血は清潔なガーゼで押さえ、欠けた破片や抜けた歯は乾燥させずに持参し、ぐらつく歯には触れないようにします。どの状態であっても、ご自宅で歯を元の位置へ戻そうとしないことが共通の注意点です。お口の状態に合わせて、受診前に行うことと避ける行動を整理しておきましょう。
| お口の状態 | 受診前に行うこと | 避ける行動 |
|---|---|---|
| 歯ぐき・唇の出血 | 清潔なガーゼで押さえる、外側から冷やす | 何度も強く口をゆすぐ、傷口を指で触る |
| 歯の先が欠けた | 破片を牛乳や水で湿らせたガーゼ・ラップに包む | 破片を乾燥させる、市販の接着剤でつけようとする |
| 歯がぐらつく・ずれた | そのまま安静にし、やわらかい物以外は噛ませない | 指や舌で揺れを確かめる、無理に押し戻す |
| 歯が抜けた | 白い部分を持ち、牛乳や歯の保存液に浸す | 根元を触る、水道水でゴシゴシ洗う、ティッシュに包む |
ポイント
出血の量が少なくても、歯の根や骨に力がかかっていることがあります。見た目だけで判断せず、破片や抜けた歯があれば保湿して歯科医院へ連絡してください。
歯ぐきや唇からの出血は清潔なガーゼで押さえ、何度も口をゆすがない
お口の中から血が出ているときは、清潔なガーゼやハンカチを当てて数分間しっかり押さえます。唇や頬が腫れてきそうな場合は、濡れタオルなどで口の外側から優しく冷やしてください。血の味を嫌がって何度も強くうがいをすると、血が固まりにくくなり出血が長引くことがあります。出血が少なく見えても歯の位置がずれているケースがあるため、血の量だけで受診の必要性を決めないことが大切です。
欠けた破片は乾かさないよう包んで持参する
歯の先が欠けてしまい、近くに破片が見つかった場合は、乾燥させないように保管して歯科医院へお持ちください。牛乳や水で軽く湿らせたガーゼ、またはラップに包んでおくと乾燥を防ぎやすくなります。破片が見つからない場合でも、欠けた断面がしみる、神経に近い部分が露出しているといった状態では早めの保護が望ましいため、そのまま連絡して受診の目安を確かめてください。
ぐらつく歯や位置がずれた歯を、指や舌で動かさない
歯をぶつけた後にグラグラするのは、歯を支えている歯ぐきや骨、歯根膜(歯と骨をつなぐ薄い膜)が傷ついているためです。どれくらい揺れるか気になっても、指や舌で触って動かしたり、ずれた歯を自分で押し戻したりするのは避けてください。受診までは硬い食事を控え、上下の歯がぶつかって噛み合わない場合は早めに連絡します。なお、傷ついた乳歯では、状態に応じて隣の歯と固定する処置が検討されることもあります3。
抜けた歯は根元に触れず、牛乳や保存液に浸して持っていく
歯が完全に抜けてしまったときは、歯の頭(普段見えている白い部分)だけをつまみ、歯の根元には触れないようにします。歯の根の周りには再び生着するために大切な組織がついているため、砂などで汚れていても水道水でゴシゴシこすったり、ティッシュに包んで乾かしたりしないでください。牛乳や薬局などにある歯の保存液に浸し、乾燥を防いだ状態ですぐに歯科医院へ連絡します1。ご自宅で元の穴へ戻すかどうかについては、次の章で説明します。
生え替わり途中で乳歯か永久歯か分からないときは、どうすればよい?
小学校の低学年ごろの生え替わりの時期は、乳歯か永久歯かをおうちの方が見分けてから連絡しなくてもかまいません。分からないまま家で元に戻そうとはせず、今見えているようすと、分からない点をそのまま歯科医院へ伝えてください。
抜けた歯を自宅で元の位置へ戻そうとしない
抜けた歯のあつかいは、永久歯と乳歯でちがいます。永久歯は、条件が合えば元の場所へ戻す処置が考えられます。
抜けた乳歯をどうあつかうかは、下で育つ永久歯のようすもふまえて歯科医院で決めます。生え替わりの途中でどちらの歯か見分けがつかないまま無理に穴へ押し込むと、歯ぐきの中の永久歯や周囲の組織に負担をかけるおそれがあります。自己判断で戻さず、牛乳などに浸して早めに歯科医院へ連絡してください。
「乳歯だから様子見でよい」とは限らない理由
「どうせ生え替わる乳歯だから、痛がらなければ様子を見よう」と考えるのは控えたいところです。乳歯を強くぶつけると、そのすぐ下で育っている永久歯の芽に影響が出て、後から生えてくる永久歯の色が変わったり、表面のエナメル質がうまく作られなかったりすることがあると報告されています4。症状が落ち着いて見えても、後から困る事態を防ぐために、一度お口の中を確認しておくことがよい状態を保つことにつながります。
乳歯か永久歯か分からないときは、見えている状態と不明点を伝える
当院では、専門用語をなるべく避けた分かりやすい言葉で説明することに加え、患者さまのご意見やお話をよく聞くことを医院の方針として掲げています。そのため、お電話の段階で専門的な言葉を無理に使う必要はありません。「上の前歯の先が欠けて見える」「生え替わり中で乳歯か永久歯か分からない」「血を見てお子さまが怖がっている」など、保護者の方から見えている様子と不安な点をそのままお伝えいただければと思います。
幸田町のわたなべ歯科へ電話するとき、何を伝えて何を確かめればよい?
歯医者さんへ電話するときは、ぶつけた時間やようす、体全体のようす、血が出ているか、歯がどうなっているか、お子さまが何歳かを伝えます。そのうえで、その日に診てもらえるか、着くまでに何をしておけばよいかを確かめてから出かけましょう。あわてないよう、電話の前に伝えることを短くまとめておくと話しやすくなります。
受傷した時刻・ぶつけ方・今の症状を、電話の前にメモしておく
特に抜けた歯や位置が大きくずれた歯は、けがをしてからの経過時間が処置の判断に関わります。お電話の前に次の項目をメモしておくと、状況が伝わりやすくなります。
- お子さまの年齢と、ぶつけた時間・場所・どんなふうにぶつけたか(公園で転んだなど)
- 頭を打ったようすや、吐き気がないか、ぼんやりしていないか
- お口のようす(血が出ているか、歯が欠けた・ぐらつく・ずれた・抜けたなど)
- 抜けた歯やかけらが手元にあり、牛乳などに入れてあるか
- 飲んでいる薬があるか、お子さまがどのくらい怖がっているか
これらを伝えたうえで、「当日の診察が可能か」「医院に着くまでに気をつけることはあるか」を確認してください。
受診後は歯の根や骨の様子を確かめ、しばらく経過を見る
ぶつけた直後は見た目に大きな変化がなくても、数週間から数か月たってから歯の色が黒っぽく変わったり、噛むと痛んだり、歯ぐきが腫れたりすることがあります。そのため受診時には、必要に応じてレントゲンや歯科用CTなどの画像検査で歯の根や骨の状態を確かめ、その後も一定期間にわたって経過を見ていくのが一般的です1。画像検査を行うかどうかや、その後の通院間隔はお口の状態によって異なるため、診察時にご確認ください。
きょうだいを連れて向かう前に、当日の受け入れと来院方法を確認する
下のお子さまを連れての移動になる場合、予約や連絡をせずに向かい、その場での対応が難しいと言われる事態は避けたいものです。幸田町にある当院は、おもちゃのあるキッズスペース、個室設計の診療室、広い駐車場を設け、お子さまからご高齢の方までの通院を想定した環境を整えています。夕方の時間帯などに車でお越しになる際も、まずは出発前にお電話でお子さまの状態をお伝えいただき、当日の受け入れ状況や来院方法をご相談ください。
よくある質問
Q. 割れた歯や欠けた歯を、市販のアロンアルファなどの接着剤でつけることはできますか?
A. ご家庭で市販の接着剤を使って歯をつけることは避けてください。家庭用接着剤はお口の中で使うことを想定しておらず、歯の神経や歯ぐきの組織を傷めるほか、歯科医院で本来行える修復処置の妨げになることがあります。欠けた破片は接着せず、湿らせたガーゼやラップに包んでお持ちください。
Q. 前歯が欠けたら、どのくらいの期間や回数で治りますか?また費用はどのくらいですか?
A. 欠けた範囲が小さく歯科用の樹脂(レジン)で補える場合は、少ない通院で済むこともあります。神経の処置や被せ物が必要になると、そのぶん通院の回数や期間は増えます。
けがの治療は、健康保険や、市町村の子どもの医療費の助成が使えることが多いです。一方、見た目を大切にして、保険がきかない自費のセラミックの被せ物などを選ぶと、1本あたり5万〜15万円ほどが一般的なめやすです。この金額は当院の料金ではなく、実際の費用は医院やお口のようすによって変わります。
ただし、生え替わりの時期や生えて間もない永久歯は、歯ぐきやあごがまだ育っている途中です。そのため、まずレジンなどで一時的に補い、セラミックの被せ物は成長が落ち着いてから考えることが多いです。なお、被せ物や樹脂の修復には、強い力が加わると再び欠けたり外れたりするリスクがあります。
Q. 夜間や休日に子どもが歯をぶつけた場合、どこに相談すればよいですか?
A. 頭を打ったようすや止まらない出血があるときは、救急の相談窓口や子ども医療電話相談(#8000)へ連絡してください。お口の中だけのけがで、かかりつけの歯科医院が診療時間外のときは、地域の休日・夜間の急病診療所(歯科)や、自治体の救急医療情報センターに問い合わせます。そこで、診てもらえる医療機関を確かめる方法があります。
参考文献
1. Laforgia A, Inchingolo AM, Inchingolo F et al. Paediatric dental trauma: insights from epidemiological studies and management recommendations. BMC oral health. 2025. PMID: 39748355 / DOI: 10.1186/s12903-024-05222-5
2. よくあるご質問|昭和医科大学歯科病院 https://www.showa-u.ac.jp/SUHD/guide/faq.html
3. Dos Santos Fernandez M, Schuch HS, Araújo ABG et al. Splinting in the management of dental trauma in the primary dentition: a systematic review. European archives of paediatric dentistry : official journal of the European Academy of Paediatric Dentistry. 2023. PMID: 36930443 / DOI: 10.1007/s40368-023-00792-4
4. Caeiro-Villasenín L, Serna-Muñoz C, Pérez-Silva A et al. Developmental Dental Defects in Permanent Teeth Resulting from Trauma in Primary Dentition: A Systematic Review. International journal of environmental research and public health. 2022. PMID: 35055575 / DOI: 10.3390/ijerph19020754
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